にしきやは湯野上温泉にあるノスタルジックな温泉民宿。温泉は贅沢な源泉100%かけ流し。築100年を経た古民家の趣きを残し、会津伝統の郷土料理と素朴でほっこりとしたおもてなしが心に響く。
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「こっちに遊びに来ないか?」と、東京から栃木に単身赴任した友人から誘いを受けたのが、今回の会津行きの発端だった。この友人Mは大学時代からの腐れ縁。数年前にも伊豆の蓮台寺温泉にも行ったことがあり、それ以来ということになる。
後日、週末を利用して帰ってきた友人と池袋で待ち合わせ、ランチを食べながらの作戦会議。当初、塩原や那須周辺を考えていたが、話をしているうちに、その辺りの温泉にはかなり行っていることがわかった。
さらに「メシが美味くてリーズナブル、でも海じゃないところの温泉」という無茶ぶりなリクエストも加わり、栃木から距離的にも近い南会津周辺を候補地に絞る。会津といえば美味い米と地酒、素朴な郷土料理に馬刺しもある。
だが、ひとくちに南会津といっても、かなりの広範囲に温泉が点在する。その中でピ~ンときたのが湯野上温泉。「大内宿」や「塔のへつり」などの観光地があり、会津鉄道の湯野上温泉駅は茅葺き屋根の駅舎として有名。かつて湯野上温泉を訪れたこともあり、微かな土地勘もあった。
湯野上温泉なら、リクエストの条件を満たす民宿もある、リーズナブルな宿がきっとあるに違いない!
予定日は平日だったが、ちょうど紅葉シーズン。さらに民宿(基本的に小規模で部屋が少ない)に絞ったことで、第一候補の宿(ここは囲炉裏のある宿)はいっぱい。いくつかある候補のうち、予約がとれた宿が「にしきや」だった。
この予約時のエピソードがあるのだが、出先のため面倒くさいスマホ入力を避け、宿に直電話をしたところ、なかなか電話が繋がらない。
20コールほどでようやく繋がり、予約したい旨を伝えると…返ってきたのは「ちょっとわからないので…」という想定外の言葉。
マジっすか? ありえないんですけど…と思いつつ「ネットをみたら、お部屋ありそうなんですけど?」とスマホで確認して答えると、「じゃあ、そこから予約してくれませんか。宿の人には伝えとくので…」と、またもやありえないひとこと。
どうやら電話にでた方は部外者っぽいおじいさん。こ、こりゃ~しょうがないか…と電話を切り、スマホ予約したのであった。う~ん…緩い、緩すぎるぜぇ!(苦笑)
そして当日、天候はあいにくの雨だが、予定は予定。東京から東北道を北上、昼過ぎに西那須野駅で友人を乗せ、紅葉真っ盛りの塩原温泉を抜けて会津西街道をばく進。
途中にあるいくつかの道の駅に寄り道しながら、湯野上温泉周辺に到着したのは暮れかかる16時過ぎ…だったが、彷徨うオヤジたちの行動力をなめたらアカンとばかり、小雨降る中、塔のへつりをスピード観光。
疾風のように現れて疾風のように去って行く…って、月光仮面ぢゃないわ!
雨の中、あっちこっちと寄り道して、ようやくにしきやに到着。すっかり暗くなってはいるが、かつて茅葺きであったと思われる特徴的な屋根がぼんやりとみえる。敷石を踏み、ようやく玄関先までやってきた。
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ガラガラと引き戸を開けると、いかにも田舎らしい…いや、外観は古民家風だが、内部はきれいにリニューアルされたレトロモダン調。きれいに再塗装を施された年代物の柱や、テーブル・椅子などはアメ色に輝き、障子と柱時計の存在もいい感じ。
しかし、誰もいない…。
「すいませ~ん」と声をかけると、「はいはい」とおっとり刀で女将さん登場。「遅くなりましたが○×ですけど」と告げると、「宿帳の記入お願いしますね」と人の良さそうな笑顔で返してくれる。この緩さというか、まったり感が民宿のいいところ。
宿帳記入の間、女将さんは友人相手に館内設備と風呂場を案内するために立ち去るが、あの~ボクは聞けてないんですけど…まぁいいか…聞かんでも大概わかるし。
そして部屋へご案内ということで、食事処を過ぎ…たらもう到着。距離にして玄関からほんの15メートルほど。こりゃ近くていいわ。
部屋は角部屋の8帖和室。古民家の面影を感じさせるように天井が高く、開放感が感じられる。二間続きになっているが、もう一間は大人数の場合に使用されるようで、襖は閉められ電気も消えている。まぁ8帖あれば充分。それ以上あっても寒いだけだしね。
冷えた身体を温めようと、まずは熱いお茶を飲み、その次とくれば温泉しかないっしょ!
風呂は檜風呂と岩風呂の二ヶ所。それぞれが男湯と女湯に分かれ、この時間は檜風呂が男湯だが、夕食後には貸切風呂にかわる。貸切といっても空いてれば好きに利用できるので、自由解放という表現が正しい。
時間制限もないし、この点もかなり緩い…と思ったが、温泉はかなり熱めで長湯はムリ。むむむ、これはこれで計算尽くされているじゃないか?(苦笑)
熱い温泉の後、部屋でぐったりしているうちに、おまんまの時間がやってくる。歩いて10メートルほどにある食事処は情緒漂うノスタルジック空間。テーブルには鮮やかに盛り付けられたサラダを始め、小鉢や小皿が並んでいる。
料理は野菜が多くヘルシーな印象で、不健康な中年男にはうってつけ。きちんと献立表があるのもいい。さらに献立表を見たら、郷土料理の品目の多さに目を奪われる。正直なところ、いくつか知らない料理もある。
会津といえば、お米と馬刺しぐらいしか知らなかったが、「こづゆ」「しんごろう」「つと豆腐」などはその一例。特に「しんごろう」は「ムツゴロウ」のような魚(ムツゴロウさんじゃないよ!)かと思っていたら、エゴマ味噌団子のこと。さらに「食用ほうずき」も初見参。プチトマトのようで独特の酸味がする。
でも素朴でヘルシーだけじゃない。牛カルビの陶板焼きはあるし、馬刺しは赤身と炙りを味噌でいただく素材と味覚のハーモニー。(コヤツ、何がいいたいんだ?)
「お酒なんにしましょう?」と若旦那(らしき)が地酒メニューを持ってくやってきて、選んだのは純米吟醸「風が吹く」。「お客様、これを選ぶとはさすがツウですね」とのことだけど、隣の客にも同じ事をいっている。 ははは、なかなかのお調子旦那だ!(いい意味でっ)
普段ほとんど酒を飲まない下戸でもわかる日本酒の美味しさ。料理とケンカをせず、肉・魚・野菜、どんな素材とも調和できる日本酒の凄さ。素材の味を増幅させるアンプのようなものだろうか。実に奥が深い。
夕食後、小休止して今度は岩風呂を堪能。狭い分ちょっと熱いがお湯の良さは変わらない。ちょっとした動物ワールド(詳細は温泉レポートを見てね!)に癒やされた。
次の朝、前日までの雨は止んだが、天気はどんより。檜風呂で朝風呂した後、周囲をちょっと散策する。辺りは静かな山間の集落という感じで、古い街並みは土蔵が見てとれる。にしきやの外観もじっくり見たが、きれいにリニューアルされた古民家の様子がよくわかった。
こころ温まる朝食の後、身支度を整えチェックアウト。お会計は、おひとり様9,330円(税別 8,500円)と大変リーズナブル。あれ、お酒代は? と思ったら、地酒一合はサービスらしい。にしきやグッドジョブ!
温泉・料理・おもてなし(ちょっと緩いけど)、この料金ではありえないほど素晴らしい。いつも辛口評価の友人Mも、「この宿はよかったな」と満足げ。まだ早いが、大内宿に行ってみるか…湯野上の民宿はじつにレベルが高い。
(2015.12 更新)
住所 | 福島県南会津郡下郷町大字湯野上字居平乙784 | TEL | 0241-68-2413 |
URL | http://nishikiya.info | IN:OUT | 15:00 : 10:00 |
宿泊料金 | 8,500円~ [2名利用 1泊2食付 税別] | 立寄入浴 | 500円 |
客室数 | 和室6 | 食事場所 | 食事処 |
駐車場 | あり | 送迎 | - |
主な泉質 | 単純温泉 | 温泉利用 | 源泉100%かけ流し |
浴場設備 | 内風呂2(貸切可) | 塩素消毒 | 塩素消毒なし |