北温泉旅館はレトロな江戸・明治期の湯治場情緒を色濃く残す秘湯の一軒宿。大きな天狗面がかかる天狗の湯が有名。映画テルマエロマエのロケ地としても利用され、外国人観光客にも人気が高い。
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福島の湯野上温泉からの帰り道、「どこかにいい温泉ない?」と同行の友人が尋ねてきた。まずはヒアリングをしてみると、栃木(那須・塩原周辺)の温泉にはかなり入っているようだ。これじゃ一般的な温泉ではダメだな…といろいろ考えて閃いたのが「北温泉」であった。
「北温泉って知ってる?」と訪ねると、知らないということだったので、映画テルマエロマエで上戸彩の実家で登場した温泉だというや否や「ぜひ行こう!」が即答で返ってきた。この前のめりぶりに「上戸彩のファンだったのか?」と思わず苦笑いせずにいわれない。
そして福島方面から旧那須甲子有料道路(福島県道290号・栃木県道290号、現在は無料)に入り、マウントジーンズスキー場を尻目に旧那須高原有料道路(ここも現在は無料)に抜け、北温泉の駐車場までやってきた。
こんなに立派だったっけ?…駐車場を見て思わず驚く。以前(9年前)利用した時と光景が異なり、山奥の寂れた感が強かった駐車場が、広く見事に整備された駐車場に変貌しているではないか。
車を駐め、宿へのアプローチに進むとこれもまた立派。きれいに整備され展望台まである。まさにテルマエロマエ効果。映画の影響って凄いもんだねぇ。
でも「北温泉旅館400m」とあるとおり、アプローチの長さは変わっていない。まっこれは無理なこと。建物が移動するワケないしね。すると友人が「マジ400M歩くの?」と声を上げる。
幸いアプローチは下り坂(その分帰りは上り坂だが)、さほど苦にもならず進むが、整備されていたのは最初だけ。コンクリート舗装されているとはいえ、途中からやはり山道というようになってくる。(ショートカット道は完全な山道)
秋の紅葉シーズン。山頂に近いこの辺りはそろそろ終盤という感じだが、それでも赤や黄に染まった木々が美しい。やがて数分ほどすると、右手に温泉プールが見えてくる。ワイルドだねぇ…むか~しはやったギャグが頭に浮かぶが、今は死語。口に出してはいけない!
佇まいは9年前から全く変わっていない。変わったのは背後の山々と葉の色だけ。昔の旅籠を思わせる鄙びた光景は記憶と同じ。強いていえば、人気(ひとけ)が多いことぐらいだろうか。
ちょっとドキドキしながら玄関ドアを見ると「クマ出没注意」と書いてある。「おいっ! ここでいうなよ」と思わず突っ込みたくなる。森のクマさん…歌は微笑ましいが、リアルは修羅場というか絶望の光景。こういう大切なことは駐車場に書いときなさいっ(苦笑)
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ご開帳とばかりに引き戸を開けると、期待通りの光景…江戸・明治時代にタイムスリップしたかのような空間…まるで映画のセットかアトラクションのような別世界が広がっている。
前回は気が付かなかったが、エントランスには一匹の猫が招き猫のようにちょこんとテーブルに座っている。かなり人慣れしているようで、近づいたり写真を撮ったりしても逃げるそぶりもない。それにしても温泉宿と猫は何故かよく似合う。看板娘ならぬ「看板猫」がほのぼのと感を演出しているようだ。
エントランスには小さな座敷スペースがあるが、ここにはテルマエロマエの撮影パネルが展示され、天狗の湯で寛ぐ上戸彩のパネルもある。友人はここに釘付け。やはり好きなのか??
館内は相変わらず雑然というか、まるで忍者屋敷にある迷路のよう。帳場から天狗の湯に向かう途中には神社(湯前神社)があり、温泉神社へ続く外階段がある。神社にも行ってみたいが、1人ではないし、今回は断念。(いつか行こう)
ふと提灯を見ると「祝戦勝」と書いてある。ん? 戦勝? いつの? 周囲を見ると明治の軍人たちの写真がある。日露戦争当時の提灯だろうか…とすると110年も前のものになるが、当時は「戦勝」ではなくて「戰勝」、いわゆる旧字体のはず。ということはレプリカだろうか。まっ細かいことはいいっこなし!
古びて暗い廊下はまさにアトラクション。ミシミシと音が鳴り、一部はメリメリしている。うわぁ、これ落ちるぞ…全備重量80kgの体躯をなめてはアカン。外人サンも怖いだろうなこれは…
天狗の湯は変わらずいい感じ。天狗面がより赤くなったが、お色直しでもしたのだろう。友人は「ここで上戸彩が…」とご満悦。この時、このオヤジはファンだなと確信。
すっかり寛いでいるうちに、続々と人が入ってくる。あっ写真…まぁしょうがない。ということで、温泉情報ページにある写真は全部使い回し。堪忍してつかわさい!
天狗の湯の後は河原の湯に移動するが、途中の通路にキリンビールのポスターが貼ってあるが、これもレトロ調。手書きの案内図はレトロというより緩さ爆発。凄い、凄すぎるこの世界は!
この浪漫のトンネル通路を抜け、河原の湯に着くが、以前は新しい木の香りがしたが、9年も経てばすっかり馴染んでくる。でも滝の光景と温泉は変わらない。ここもい~感じ。
今回は相の湯を割愛したが、変わらぬレトロ情緒と独特の異空間は健在。それどころか、テルマエ効果も加わり、もはや温泉ファンにとって聖域と化している感もある。ちょっと古いが、温泉三昧できて料金もリーズナブル。次は泊まりだな…そう心に決めた。
(2015.12 更新)
住所 | 栃木県那須郡那須町湯本151 | TEL | 0287-76-2008 |
URL | http://www9.ocn.ne.jp/~kitanoyu/ | IN:OUT | 14:00 : 10:00 |
宿泊料金 | 7,700~9,700円 [1泊2食付] | 立寄入浴 | 8:30~16:30 [700円] |
客室数 | 和室 45 | 食事場所 | 広間 |
駐車場 | あり(徒歩400m) | 定休日 | 無休 |
主な泉質 | 単純温泉 | 温泉利用 | 源泉かけ流し |
浴場設備 | 内風呂・露天風呂・温泉プール | 塩素消毒 | 塩素消毒なし |