温泉新選組 > 群馬の温泉 > 湯宿温泉 > ゆじゅく金田屋
ゆじゅく金田屋は明治元年(1868年)創業の老舗宿。館内はノスタルジックな旅籠の趣。歌人若山牧水が大正11年に逗留した蔵座敷が「牧水の間」として当時のまま保存されている。
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三月上旬、スノーボードを滑りに、週末かぐらスキー場に行こうと考えていた。ウィンターシーズン真っ直中、湯沢・苗場エリアでいい温泉宿はそうは空いてない。でも泊まるなら温泉宿、ましてや源泉かけ流しの宿に泊まりたい。どうしたものかと思案していた時、ふいにひらめくものがあった。
べつに新潟に限定する必要なない。三国峠を下り群馬まで足を伸ばせば、いい温泉宿があるんじゃないか? これぞ発想の転換。こうして見つけた宿が「ゆじゅく金田屋」
サイトをみると野菜中心の創作料理も美味そうで、狭い部屋で我慢すれば料金もお手頃価格。未入湯の湯宿温泉に行けるチャンスでもある!
そして当日…
日帰りならば、時間いっぱいまでスキー場にいるが、温泉宿に泊まれるとなったら、撤収は早い。田代ステーションをいつもより2時間も早い14時30分には後にして、三国峠を下っていた。
雪深い峠を抜け、猿ヶ京を過ぎ、かぐらスキー場から走ること30分あまり、湯宿温泉が近づいてくる。国道沿いの駐車場に車を入れ、数十メートルほど歩くと「ゆじゅく金田屋」の建物が見えてきた。「湯治場らしい静かそうな宿だなぁ…」というのが第一印象。玄関はガラスの引き戸で、中はよく見えないが、どんな感じなんだろうか…?
扉を開け、玄関ロビーに入ってみると…そこには僕好みのレトロモダン空間。ある程度事前に知ってはいたが、ちょっとした嬉しい驚き。時代を経た木の匂い、飴色の床板と階段、レトロな箪笥と屋号看板に柱時計、そして蔵らしき入口。ノスタルジックに包まれた、期待以上の空間が広がっている。
館内施設は、こぢんまりとした喫茶・お土産スペースぐらいだが、特に不便さは感じない。館内はキレイにリニューアルが施され、狭く急な階段など、古の日本家屋の名残を留めている。現代的な建物では味わうことのでききない「趣き」を感じられる。
ん~チョ~いい感じぃ~(ローラかっ)
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チェックインを済ませ、早速気になる蔵のことを聞いてみる。すると、かつて蔵は独立した離れのとして人気の部屋だったそうで、大正11年に歌人若山牧水が利用した二階を「牧水の間」として当時のまま保存しているとのことだった。
これはもう見るしかない。狭く急な階段を昇ると、鴨居は175cmあれば頭をぶつけてしまうほど低く、当時の日本人の身長に合わせた造りであることを思わせる。
いい部屋だ。エイジングされた壁や襖。レトロで離れ的な感じが実に素晴らしく、ここだけ時間が止まっているかのように、牧水の歌集や短歌の書かれた掛け軸がかかっていた。
記念室として残す気持ちは分かるけど、ちょっともったいない。牧水ゆかりの部屋として宿泊できるようにすれば、かなりの人気部屋になるだろうが、金田屋にとって経済(売り上げ)よりも歴史・文化(スピリッツ)が大切だということ。こういう宿は好きだ。
蔵の見学の後、今回利用する部屋に案内をしてもらう。部屋は二階にある「しゃくなげ」。6帖一間のコンパクトな部屋で、眺望は望めず、トイレも外の共同トイレだが、料金が極めてリーズナブルなので文句はない。
小さいながらもコタツもあり、20代の頃過ごした社員寮のようで、妙に落ち着く。衣装掛けにウェアを掛けると、ますます当時の寮部屋に似てきた。う~ん懐かしい…
「さぁて、湯めぐりに行くか!」と気合いを入れ、浴衣に着替えて準備万端。サンダルを借りて浴衣姿で外に出る…が、さすがに3月初旬の上州路。吹く風は冷たく、足は素足で、羽織をかけているが浴衣の袖は七分袖の素晴らしさ。
は・や・く・お・ん・せ・ん・を・さ・が・さ・な・い・とっ
寒々しい姿で温泉街を練り歩き、窪湯、小滝の湯、竹の湯、松の湯をはしご湯。温泉は熱いが、移動する間に身体が冷えて、また温泉に入りたくなる。いってみれば、湯めぐりには最適な環境だったわけで、やはり湯めぐりは寒い時期に限るねぇ。
宿に戻ると、次は宿の内風呂の番。浴場は広くはないが、木曽檜造りの脱衣スペースと蔵のような浴場(男性:弘須の湯)は清潔感にあふれている。湯船の湯温は41℃前後の適温に保たれ、ゆっくりじっくり温泉を楽しめる。とはいうものの、すでに5湯目。さすがにふやけてしまうばい…
夕食は隣の部屋で用意がされていた。どうやら人数によって部屋出しと食事処というように、食事場所が変わるようだ。料理は野菜・きのこなどの地元産の食材ををふんだんに盛り込んだ「上州おっかあのおごっつお料理(創作料理)」。今までいろいろな宿で料理をいただいたが、一番野菜の種類が多いように感じる。ヘルシーで手の込んだ献立は女性の評価が高そうだ。
食事の後、部屋に戻ると布団が敷いてある。まだ寝てはもったいない。コタツでゴロ寝でもと思ったが、横になると猛烈な眠気が襲ってくる。ビールの酔い、満腹感、湯疲れ、スノーボードの疲れが一気に回ったようだ。だめだこりゃ…しばし休憩zzzzz
気がつくと、時計の針は0時30分を指している。どうやら4時間以上も寝落ちしたらしい。おもむろに起きだし、浴場へと向かうが、館内は静寂に包まれ、響くはミシミシと歩く音のみ。深夜の温泉宿はまるで金田一耕助の世界。お~恐っ(苦笑)深夜の湯浴みはサスペンス。
湯浴みの後、布団に入ると朝の7時まで爆睡。それにしても、温泉宿で8時間以上も寝たのはいつ以来だろう。枕が違うとなかなか寝付けないのだが、宿の枕が低反発素材なのでかなり寝付きがよかった。うん、枕はとても大切だ!
眠気覚ましの朝風呂ですっきりした後は、昨晩と同様に隣室に朝食が用意されていた。野菜・きのこ・魚・豆腐(おから)・卵と温泉を絡めた自然流菜根薬膳料理はとってもヘルシー。朝夕合わせて何種類もの野菜を摂っただろう。かなり健康体になった気がするのは気のせいか?
初めての宿なのに、初めてじゃないほど寛いでいる。温泉宿にいるのに、まるで田舎のじいちゃん・ばあちゃんの家にいるみたいな感じ。それが「ゆじゅく金田屋」の率直な感想。どことなく懐かしいレトロな空間が、遠い昔の感覚を思い起こさせてくれるのだろう。
しかし、ここでハプニング発生。この寛いだまったり感が全身を駆け巡り、予定してたスノーボードは急遽とり止め。「自由気ままに予定変更!」これぞ大人の休日というもの。
そうだ、帰りは法師温泉に寄っていこう。そうと決まれば動きは素早い。準備していたウェアをしまい込み、宿をチェックアウト。一路、法師温泉に向かうのであった。(→法師温泉長寿館に続く…)
(2015.10 更新)
住所 | 群馬県利根郡みなかみ町湯宿温泉608 | TEL | 0278-64-0606 |
URL | http://www.yujuku-kanetaya.com | IN:OUT | 14:00 : 10:00 |
宿泊料金 | 9,450円~ [2名利用 1泊2食付 入湯税別] | 立寄入浴 | 13:30~16:00 [600円] |
客室数 | 和室 15 | 食事場所 | 部屋出し・食事処 |
駐車場 | あり | 送迎 | - |
主な泉質 | ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉 | 温泉利用 | 源泉かけ流し |
浴場設備 | 内風呂 | 塩素消毒 | 塩素消毒なし |